インドネシア報告(13) 進水式が待ち遠しい 2009/1/14

 1月4日の地震では、震源地が遠いこともあって何も感じなかった。11日未明の悪天候によるフェリーの転覆は目の前の海で起こっている。200人以上が行方不明になっているようだ。9日から10年ぶりの大雨が降っていた。あちこちで水が噴出し、川のようになった。近くの町では洪水で浸水したり、交通麻痺になっている。今月になり、スラウェシ島では本格的な雨期に入っていて、強い西風が吹くようになった。この気候は2月末まで続く。クリスマス、1月4日、1月7日と延び延びになっていた丸木舟・縄文号の進水式は10日の予定も延期になった。今月21日にはもう一艇のマンダールの伝統的構造船パクールの進水式も予定していた。そちらの進水式も遅れそうだ。今月下旬または来月に同時に進水式という可能性もあり、長期戦に備えてクルーの佐藤洋平、前田次郎はビザが切れるために一旦インドネシアを出て、シンガポールに向かった。即日引き返して、ここに戻って来る。若いクルーたちのインドネシア滞在はもうすぐ6カ月になる。

 既に縄文号はアウトリガーの取り付けは終わり、マストも立った。帆も準備できたのだが、帆の竹枠を用意したものの不備が分かった。まだ塗装ができない状態にある。塗装はココヤシの油と隆起珊瑚を焼いて作った消石灰とを混ぜる。ここではレパと呼ばれる漆喰だ。石灰岩を焼いて水をかけると化学反応を起こして熱を持つ。この化学反応は先史時代から利用されてきた。日本やマヤでは消石灰に水を加えて利用してきた。これは晴れていないと塗れないし、乾燥期間が必要だ。まだ時間が必要だ。今日も朝から雨が降り始めている。

 4月出航で、3月にトレーニングの予定で、まだ想定内の遅れなのだが、「早く丸木舟を海に浮かべたいな」と夢想する毎日だ。縄文号は不格好だが、世界に一つしかない長さ7mの短い丸木舟だ。パタゴニアやベーリング海峡、宗谷海峡を渡ったカヤックは6.5mだったので、短いことが分かる。世界に一つということは実績のないということで、海に出してみて初めて不具合が分かる。その調整もしなければならない。

 最近、縄文号のキャプテンの座る場所によく座って、海を見る。この小さい舟で外洋を4000km航海して日本に向かう姿を思い浮かべる。「気持ちいいだろうな」という期待と「恐いだろうな」という思いが交錯している。

 日本人4人のクルーに加えて、インドネシア人クルー6人も決まった。まだ舟もできていないのに、出航が待ち遠しい。