航海日誌 2011/5/12

Pasquin沖を4時45分に出航。弱い東風。東の水平線に金星が明るく輝いている。6時過ぎに太陽が出て南東の風に変わる。7時に南風に変わる。微風。北と西の水平線に積雲が出ている。うねりもなく、波も微風にざわめいている程度。スピードは昨日の半分程度で、ゆっくり水面を切って進む。もうすでに日差しが強い。Cape Bojeadorを右に見ながら進路を徐々に北東に向ける。灯台が見える。相変わらず弱い南風。ここでは外洋で竹イカダを使って魚を捕っている。

ルソン島の北側に出た。Bangui Bayに沿って風力発電機が20基見える。軽快に北東に向かう。Pagudpud Saud Beachを南に見ながら西に向かう。ハイペースで来たが、風が落ちてきた。午後1時、長い白い砂浜が終わり、Claveriaが見えてきた。海は穏やかで西からの微風が吹いている。舟はゆっくりと東に進んでいる。イースターも終わり、海岸には誰もいない。海は濃いエメラルドグリーンで透明感がある。

ルソン島の北端沿いに半月の月に向かって進んでいる。このまままっすぐ行けば新大陸メキシコあたりに着くはずだ。私たちはClaveriaから北上して台湾、日本列島に向かう。ルソン島の北端は断崖絶壁だ。反対側の大海原は海面が果てしなく続いている。これから私たちの渡ろうとしているルソン海峡は南シナ海と太平洋にはさまれた難所だ。黒潮が激しく北上し、南シナ海と太平洋を行き来する海流が潮の流れを複雑にしている。

生命が生まれたとされる、地球の表面積の3分の2ほどを占める海と人類がうまく付き合うようになったのは、人類史の中では最近の事だ。海を活用するようになって人類の活動の範囲は大きく広がった。なにしろ海は竜宮城にたとえられるように栄養の宝庫だ。自由に移動できる海道でもある。

この海道を通ってスンダランドから日本列島にやってきた初期人類がいた。その道を、太古と同じ素材と作り方で作った舟で航海している。

15時ころから風が弱くなってきた。16時過ぎにはすっかり風が止み、海は青い重油のようにねっとりとしている。潮の流れは西から東。そのまま漕ぎ続けて18時10分に投錨。