先週から始まった「国立奥多摩美術館~13日間のプレミアムな漂流展」に、「風獣土獣像」を展示しています。・2014年9月13日〜

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<展覧会・国立奥多摩美術館の情報>
○会期
2014年 9月13・14・15日 20・21日 27・28日
10月4・5・6日 11・12・13日
12:00~20:00
 
○実施場所
〒198-0171 東京都青梅市二俣尾5-157
アクセス:中央線-青梅線-奥多摩線「軍畑駅」から徒歩7分。
 
○観覧料 500円

私は「風獣土獣像」を展示しています。最近は奥多摩の軍畑にある奥多摩美術館での展覧会に出展するための作品作りに追われていました。

7月はじめ、美術館の館長、副館長が武蔵野美大の私の研究室にやってきました。
「関野さん、絵を書いてみませんか」と言います。「絵は描けないし、高校生の時以来、美大にいるとはいえ、絵を描いたことはないよ」と告げたのですが、「絵が下手なのは分かっています。だから頼んでいるのですよ。上手く描こうなんて絶対に思わないで描いてください。お願いします」というので、「写真ではダメなのか」と尋ねると、「写真を使ってもいいけど絵の具で絵も描いて欲しいんです」
犬を書いても、これ猫じゃないのと言われるほど、絵心がありません。「無理だよ」と、一旦断ったのですが、「是非描いてください。下手なだけに人の心を動かすものが描けるはずです」と説得してきました。「しばらく考えさせてくれないか」と言って別れましたが、  その後も彼らに、「関野さんが絵を描いたらきっと面白いですよ。下手でもいいものができますよ」おだてられ、「写真を主にして、少しだけ絵を描けばいいか」と思って作品を作ることにしました。「でも、描くならば、真剣に描いてください」と、おだてる割には注文も多いのです。
 
写真展は何回も試みましたが、知らない人に絵を見せることになるとは夢にも思っていませんでしたが、美術館スタッフと相談しながら案を練っていきました。結局出来上がったのは「風獣土獣図」です。俵屋宗達の「風神雷神図」もじったものです。風獣は同じ個体が極南北から熱帯までまたにかけて回遊するクジラ、土獣は生まれた川から絶対はなれないワニを、それぞれ1体づつ厚い合版に書き、切り出しました。およそ2メートルあります。それに絵の具で色を塗りました。
4X5メートルの壁面の上部に絵の具で宇宙を描き、中下段には私が今まで見てきた光景の中で、地球を感じた写真を三十数枚パネルにして展示します。その壁面の前にクジラとワニを対峙させます。風獣と土獣で地球の風土を作ります。地に足のついた土獣世界は空気が澱んできますが風獣がそのよどみを一掃してまた旅立って行きます。
 
その二獣の周囲に500枚、私が四十数年間で出会った人々の顔写真をパネル貼り、一枚一枚別々に配備します。最近は毎日のように奥多摩の美術館に通って作業をしてましたが、他の作家から「関野さん、楽しそうですね」と言われていました。新しいことをやる時って結構夢中になり、おもしろいものです。
 
青梅線軍畑駅から歩いて10分、高水三山の登山上り口を登って行ったところに、古い製材所を改修した国立奥多摩美術館があります。
9月13日から10月13日まで土日祭日の正午から午後8時まで展示しています。時間があったら、高水三山をハイキング(3-4時間)がてらでも、見に来てください。

<「国立奥多摩美術館」について>
この「国立奥多摩美術館」では、モノ作りに関わる人間にとって無視できない「作品制作」と「作品発表」について1つのモデルケースを作りたいと思っています。作る人・、見る人が互いに影響しあい未来を変えていけるという可能性。今この世界を一緒に生きているという奇跡。この世界が隠し持つ、まだ見ぬ得体のしれない無数の可能性を、作り手と観客が直接出会う事で互いに模索していけるようなシンプルな場所にしたいと思っています。
館長 佐塚真啓

<「国立奥多摩美術館~13日間のプレミアムな漂流」について>
このたび、「国立奥多摩美術館 ~13日間のプレミアムな漂流~」を開催いたします。
2012年開館しました本美術館も、2年という歳月。雨風に耐え、そして今年の大雪。あと1日降り続いていたらつぶれていたのではないかという自然の猛威に脅え、更なる進化をとげてこのたびの展覧会開催に至りました。
 
今回は「13日間のプレミアムな漂流」。
道が整備しつくされ、いたるところに解説や注釈があふれ、自分の意志を超えたところで全てが調合されている現代。自分の意志を超えた大きな力によって流され、漂うという意味においては、過酷な漂流の真っただ中にあるのではないでしょうか。
私はそんな状況の中で、嬉々とし悠々と舵をきる人たちを知っています。
今この世界を一緒に生き、漂う13人の作家たち。
今私が考えうる最高の作家たちによって本展覧会を開催するにいたれた事を心から嬉しく思います。
都心からは約1時間半と遠い山中「国立奥多摩美術館」ですが、この機会にぜひ足をお運びいただき、各作家・作品に直接ふれていただきたいです。そして皆さまの日々の生活の中で漠然と感じている、言葉にならない「何か」に向かい合う瞬間になりましたら、私のこの上ない喜びです。13日間という短い期間ではございますが、心より皆さまのご来場をお待ち申し上げております。

<参加作家>
赤石隆明
牛島達治
小鷹拓郎
こようちひろ
Colliu
関野吉晴
武田龍
永畑智大
二十二会
松尾勘太
山本篤
和田昌宏

<「美術」について>
私は「美術」という言葉が「美しい絵画」「立派な彫刻」だけを指す言葉だとは思っていない。ましてや「わけのわからないもの」なんて論外。私の心を動かす全ての物・事に「美術」という言葉をあてている。勝手な解釈だが。「美術」。「美」を作り出す「術」。この「美」は、「美しいモノ」をピンポイントで指す言葉ではなく、「美しいモノを見て心が動く」という感情の動きを指す言葉だとおもっている。多くの人と共有できる普遍的な心の動きの1つとして「美」という文字をあてたんだと思う。だから、何かわからない物を見て「これ美術っぽい」みたいな言葉を聞くと、なぜあなたの心を動かさない物をみて「美術」という言葉を使うのか?と思い「美術」という言葉がいつのころからか、この社会で持ってしまったであろう色を感じ、悲しくなる。このままでは「美術」という言葉は「わからない」の派生語になり、「美術」というジャンルに関わる人は、社会の部外者になってしまうのではないか?まず「美術」という言葉を、あなたの心を強く動かしたモノを指す言葉として使ってもらいたい。宣言したい。国立奥多摩美術館では、「美しい絵画」「立派な彫刻」は見れない。見せるのは「美術」という言葉が持っている可能性。この世界を敏感に鋭く意識化している人間からのメッセージ。「美術」という言葉に「わからない」という言葉をあてはめている人にこそ見に来てもらいたい。(佐塚)


 
○WEBサイト
http://moao.jp
 
○お問い合わせ先
担当:佐塚真啓
電話番号:090‐2136‐8746
メールアドレス:info@moao.jp
住所:東京都青梅市東青梅3-7-9

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以下の写真以外に500人以上の老若男女の私の友人たちが入場者をお待ちしています。 関野吉晴

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