航海日誌 2011/5/19

 5月18日午前5時にはBabuyan島を出た。帆を上げる時に細心の注意を払うことを怠ってブーム(帆をぴんと張っている竹で出来た棒)を折ってしまった。

 アクシデントが起こった時にどのように対処するかが大事で、すぐに用意してあった2メートルほどの副木を当ててロープでしばった。骨折の治療と同じだ。天気は朝からどんよりと曇っている。

 昨日の昼間はほとんど走れなかった。北寄りの東風が吹いたからだ。そのうえまたブームの別の部分が折れた。今度は応急処置ではなく、スペアとして積んであった竹に替えた。

 修理作業が終わったのが19時。それから強い風が吹き始めて、勢いよく走った。

 19日の朝5時には明るくなってくる。台湾とルソン島の中間地点のBatanes諸島の西側に出た。梅雨前線がフィリピンまで南下していて、一晩中どんよりと曇っていて、雷も光っていた。方角の目印となる月や星は見えず、真北に行かなければならないのだが、北西に向かわざるをえず、途中から北東に進めたが、進路変更が遅すぎて、諸島の西10キロほどの所に出てしまった。

 30時間以上かけて12時15分にSabtang島の西の小さな島の近くでいかりを下ろした。88キロ走った。

 Batanes諸島に着いた時、Babuyan島の島影が見えた。小さな島でも80キロ離れたところからでも、それも曇っているのに見えたことに驚いた。

 18日と19日の航海は、これから更に困難な航海をしなければならない私たちにとって、よい経験になった。

 今回の航海の最後の難関は、台湾から与那国島または西表島までの今回の最長部分だ。

 現在の状況だと台湾から沖縄の航海は6月初旬で、新月の前後になる。曇りで星も見えないと、コンパスもGPSも使わない私たちにとって、より困難な航海になる。

 台湾から沖縄を目指すとき、台湾の成功港(東海岸中南部のサクセス・ポートと読める幸先のよい名前だ)から、与那国島まで220キロ、西表島まで280キロある。その間に島影はない。私たちにとっていかりを下ろさずに航海する最長距離だ。