1月21日、やっと丸木舟「縄文号」が完成した。最後の作業は帆作りで、ラヌという椰子の仲間の若葉から作った。若葉を細く裂き、それを織ったものだ。私の現在滞在しているところでは30年前まで使っていたという。ポリネシアやミクロネシア、インドネシアの東部で使われているバンダナスの葉を利用した帆よりも軽い。
33年前、ミクロネシアからシングル・アウトリガーカヌーで沖縄まで航海してきたサタワル島のチェチェメニ号はバンダナスの葉で帆は作ったが、その帆で帆走したのは出発時と沖縄到着時だけで、その他は合成繊維の帆が使われた。私たちは出発からゴールまでこの天然素材から作った帆を使おうと思っている。この帆で航海したことのある老人たちに尋ねてみると、日本までは分からないけれど、長期航海が十分可能だという。
その前に船体に塗装した。ペンキは使えない。そこで選んだのが船体の穴埋めに使った、漆喰だ。塗料として使う時はコットンは混ぜない。
丸木舟は完成したがもう一艇のマンダール人の伝統的構造舟パクールは完成までに7~10日かかりそうだ。早く縄文号の進水式をしたいが、さまざまな制約がある。月の大きさ。月が小さくなっているか(新月に向かっている)大きくなっているか(満月に向かっている)、暦などなど、伝統的な慣習を基に日取りを決める。決めても天候によっては中止になってしまう。太古の人と同じように目に見えない存在がこの世界を支配していて、その存在に恐れを抱き、敬意を払っている。
「自然から素材をとってきて自分たちで作る」というコンセプトで丸木舟造りをしてきた私たちも霊的存在に敬意を払う舟大工たちのやり方に敬意を払わなければいけない。舟大工の棟梁と霊的力を持った人とが相談して日取りを決めることになっていた。そして1月28日の水曜日は新月の翌日で、マンダール暦では2月の最初の水曜日「生きている水曜日」と言われている。新月の後ということはこれからどんどん月が大きくなっていくということでもあり、進水式にとってもとてもいい日取りだという。あとは天候次第だ。